-仕事とレース2-
バトルマガジン2001年12月号より







 昔から”うじうじ悩む”ことが大嫌いで、壁にぶつかったときとかでも、すぐに行動に移したり実行したりしてきた。「悩む時間がもったいない。人生いつも前向き前進あるのみ!後ろは振り返らない」。がモットーのかずみっち。

 でも今回ばかりは違った。私の当時働いていた会社は、やりがいがあって楽しくて、給料もよくって毎日会社に行くのが楽しくなっちゃうような会社だったの。人間は一度いい生活をしてしまうと、そこのポジションから生活レベルを落とすのってすごくいやなもの。お金があったほうが生活にゆとりも生まれてくるし、心だって潤う。今の時代、こんないい会社はどこを探してもなかなか見当たらないでしょ?



 安定した生活を捨てて、不安定な職業(フリーター)をすることがすごく恐かった。レースをやるからには、ある程度給料も良くなくてはいけない。でも、アルバイトで時間も融通が利いて給料もいい会社なんてなおさらないし、あてもない。

 失敗したらどうしよう?多額の借金を抱えてしまったら?公認レースに出て芽が出なかったら、その後の人生取り返しがつくんだろうか?迷いの日々が続いた。
 そんなある日、会社によく遅刻してくる同じ女性トラッカーのKちゃんと話す機会があった。Kちゃんのことは前から知っていたけど、出勤時間や帰社時間が違ったので、同じ職場でも顔を合わせることはほとんどなかった。



 Kちゃんと話をしてビックリした。「会社には内緒だけど、私仕事終わってから、夜の2時まで働いてるの。どうしても欲しい車があるんだけど、改造とかしたいから、お金が必要で。でも、朝とか起きれないし困っちゃうよね」。そう言って笑う彼女の話を聞いて、頭を金鎚で思いっきり叩かれたような衝撃が、頭の中を走った。。

 「私よりもっと頑張って努力している子がいるのに、私、今まで何やってたんだろう!まだ20才なのに、安定している職業がいいって自分自身に言い訳して、生ぬるい水に浸かって全然駄目じゃん。このままこの会社にずっといたら、私一生後悔する!」

 すぐにその子にバイト先を紹介してもらって、二人で会社に内緒で、居酒屋でアルバイトをはじめた。目標は、翌年の4月にレースデビューすることを想定し、お金を沢山ためること。



 毎日不安だった。”フリーター・・・。今までやったことのない職業”不安だから、働いた。不安にならないためにがむしゃらに働けば、その時は考えないで、悩まないで済む。つらい時はその子と励ましあったりして、お互いを勇気づけた。一番の問題はやはり”寝不足”だったけど、自分がやりたい事、行きたい場所に辿り着くためには、そんなことは全然苦じゃなかった。むしろ”苦”といえば、今頑張らないでこのままやりたいこともチャレンジしないで、普通に毎日暮らすこと。

 そして一年間必死に働いて、1999年3月の公認レースデビューの前日に、会社を退職した。先の見えない生活に飛び込むことにまだ不安はあったけど、心の中はすっきりしていて、さわやかな風が吹いていた。デビューレースはなかなかの好成績をおさめ、翌月のレースでは、雨の中AE86でポールポジションを獲得し、周囲から高い評価を受けた。

 チェッカーを受けた瞬間、「この道を選んでよかった」。心からそう思った。ここまでくるのには、楽しいことよりつらいことのほうが多かった。だけど、チャレンジしていかない人生なんてつまらない。


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